なぜか

2020年11月29日

突然始まる謎ストーリーが頭に浮かんだので、メモ代わりに…。完成度は求めないでくださいね…。

(今書いている単発ものの話とは関係ないです)



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「久しぶりだな、サン。変わりはないか?」

これといった目的もなく、気ままに森を散歩していたサンとアシタカの二人のもとへ、一頭の山犬が現れた。

「…誰だ、お前。ここの山犬じゃないな。匂いが違う…。」

「今はな。ずっと前にはこの地にいたこともある。サンともこのシシ神の森のことをいろいろと話をしたものだ。」

山犬は距離を保ちつつ、そう言った。

再びかけられた声音におぼろげな記憶を辿ったか、サンは「…あぁ、お前か。そういえば、そんなこともあったな。」と返す。

「サン、彼は?」

アシタカが尋ねると、サンは「昔、ここにいた山犬だ。モロの一族ではない、別の一族の者だ。」とだけ答える。

「今さら、なんの用だ。どうしてここに来た?」

サンはその山犬に聞き返した。

山犬は答える。

「風の噂で、サンの体調が優れないと聞いた。…そして、それだけでなく、サンが好んでいたこの森の獣たちとの触れ合いをやめるかも知れないとも…。」

サンは戸惑っているように見えた。

そんな彼女を知ってか知らずか、山犬は続ける。

「それを聞いて驚いてな。余計なお世話だろうかとよほど迷い、考えたが、それでも過去に世話になった身だ。一声かけるべきだろうと思い、ここへ来てみた。…だが、どうやらこちらの考えすぎであったようだ。とりあえずは安心した。それだけだ。」

身勝手な言葉に、サンはどこか怒りを覚えているようにも見える。

そんなサンを脇目に、アシタカが口を開く。

「山犬よ、そなたはなぜこの地から去ったのだ?」

山犬はアシタカに視線を向けると、落ち着いて語り出す。

「何年も前、俺は一族のもとを離れて自らの力で生きていかねばならぬ境遇にいた。最後にサンやこの森の仲間達と話をしたのもその頃のことだ…。その後、俺は実際に群れを離れ、こことは別の世界で、新たな形、新たな地で一から自らの生き方を造り上げなければならなかった。正直なところ、あの時の俺には、この地に留まる余裕はなかった…。精神的にも、体力的にも…。とにかく目の前の新たな生き方を覚え、適応していくことに精一杯で、周りを見る余裕がなかったのかもしれない…。だから、この地から姿を消した。…だが、それでも時が許せばこの地を訪れることもあった。皆と会って話すこともできたかもしれないが、そこまでする気にはなれなかった…。再び周りを見れるようになったのは、群れを離れてから何年か経ってからのことだ。その時にはもう、周りは何もかも変わってしまっていた…。昔よく訪れた地には、今では失われてしまった場所もあった…。それに気づけなかった己に驚きもした。」

山犬はふと溜息をつき、そののち再び口を開く。

「少し前のことだが、久方ぶりにシシ神の話が獣達の間で囁かれた。だからか、近頃はまたシシ神の森のことを思い返すことが多くなった…。それもあり、思い切ってもう一度ここへ来てみようかと思った。」

「本当に、それだけか?」

サンが問うた。

「確かに、シシ神のことでいえば、ほんのいくつかの点でサンとは方針が違うとは思っていたが、それがこの地を去る理由にはならない。たったいくつか考えが違う程度で、相手の全てを嫌うなどありえない。そもそも、シシ神の件では世話になった身であるからな。何か己と異なることがあると感じれば、その時は静かに見ていた。口を閉ざすことなく、何かしらを伝えればよかったかもしれないが…。どう感じていたのかは分からないが、念のためそれだけは伝えておきたい。」

山犬は、最後に言う。

「俺が、長い月日の後に再びこの地に来たことで、サンの大切な何かを壊してしまったのなら、本当にすまない。この先、身の程をわきまえなければと思っている。」

どこか怪訝そうな表情で山犬の話を聞くサン。その傍らで、山犬どうしのやりとりを目にしていたアシタカは、話が見えず、きょとんとするばかりであった。



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ということで、ふっと思いついたお話でした。

続きというか、裏設定的なものは今のところ浮かびませんが、とりあえず、書き留めておこうかと。(ここに書いてどうすんのという感じですがね…笑)


また、悪戦苦闘中の小話の作成に取り掛かりたいと思います!

それでは!






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